境界とは、人と人の間にある国境のようなものです。国境を超える場合にはパスポートが必要です。入国する際には審査を受けます。人の境界にはパスポートはありませんが、勝手に踏み込んでいっていいというわけではなく、マナーが必要です。
人と人の間にある「境界」は目には見えない、立入禁止の領域を示すものです。
境界の向こう側とこちら側には、互いに自分の世界があり、銘々の「人格」があり、尊重される権利があります。
次にあなたに該当する項目が、いくつあるか確認してみてください。
・依頼されたり、期待されたら、断ると悪いと思ってしまう。
・断っても安心な人には、平気に断ることができる
・相手の考えに合わせて、自分の考えを変えてしまう
・自分の意見を相手が受け入れるか不安で率直に言いにくい
・(自分を受け入れる人には、気を使わずに話す)
・相手が怖くて自分の思いを言葉にできない(安心出来る相手には平気で言う)
・欲しいものや必要なものがいえない(信頼している人には不満を言う)
・ひとの意見に合わせる(信頼している人には合わせない)
・自分で決断できない(文句を言って相手に決断させる)
・相手の気持ちのすべてを自分のものにしたい
・相手を自分に合わさせようとする
・批判されると落ち込む、カッとくる
・相手が悲しんでいると自分が後ろめたく感じる
・他者の責任を押し付けられる
・相手の問題解決に必死になる
・自分よりもひとの世話をする
・相手が楽しそうでないと自分が責任を感じる
・自分の幸せは相手にかかっていると思う
・相手の問題解決のために相手以上に躍起になっている
・相手があなたを幸福にしょうとしている
・相手があなたの問題を解決してくれる
・あなたを相手の力で幸せにしてくれることを期待している
・相手の不始末の責任を自分がとっている
・休んでいたら悪い気がする
・相手に自分の食事を選んでもらう
・許可なく勝手に部屋に入ってくることを許してしまう
・許可なく勝手に部屋に入る
・健康に障害が出るほどハードな仕事をさせられている
・相手が場にふさわしくない服装だと自分がはずかしい
・疲れているのに他者に世話をさせられる
・不機嫌な態度で相手を変えようと試みる
・自分を傷つけるひとと関係を続けてしまう(自分が相手を傷つけても平気)
・自分だけの時間が持てない(相手が自分だけの時間を持つと不安になる)
・暴力行為を受ける(暴力行為をする)
・勝手に性的な接触をされる(性的な接触をさせるようにする)
・約束を勝手に変更される(約束を勝手に変更する)
・自分のモノを無断で触られる(相手のモノを無断で触る)
・貸したお金を返してもらえない
・借りたお金を返さない
境界がないと、以上のような現象が起こります。
境界とは、憲法で定められている「人権」そのものですが、「境界」の認識が一般に広まっていないので、人権を権利と思い込んでいる人が多いようです。権利であることに違いはありませんが、相手の人権を自分と同じように尊重する、逆に相手と同じように自分を尊重することが大切なのです。権利というなら「尊重する権利、尊重される権利」と考えた方がいいでしょう。境界は自主的に緩めたり、締めたりできる柔軟なもので固定したものではありません。
最近は、この境界が乱れています。頻繁に繰り返されるむごい事件が人権を守れない脆弱な人間性を物語っています。自分の思い通りにならないと暴力で思い通りにしようとして、それが叶わないとなると簡単に殺してしまう、というおぞましい事件はその典型なのです。自分と他者の境界が意識されていないのは、余りにもひどい話です。
昔から「親しき仲にも礼儀あり」と言われるように、境界は親子にも、夫婦にも、恋人にもあります。ところが境界のないことが親密さの証しのように思い込んでいる人もいます。このあたりは大変微妙です。たとえば恋愛や結婚のメリット、ワクワクというのは、依存できることが安らぎになっていることにあります。気持ちは理解できますが、やがては関係をダメにしてしまう危険を孕んでいるのも事実なのです。依存の関係は永くは続きません。
境界を守ることは、他人行儀なことと思われるかも知れませんが、そんなことはありません。境界は固定した壁ではありません。境界は自主的に緩めたり、締めたりできる柔軟なものです。そこで境界がないくらい親しいというように錯覚することもあります。しかし「対等」であることを抜きにして親密さを語ると危険です。
境界を尊重するには、(自分にも相手にも)率直であること、(自分にも相手にも)誠実であること、(自分にも相手にも)対等であること、そして(自分にも相手にも)責任をとることが条件付けられています。もし、これら4つの要素のどれかひとつでも欠けると、無断で越境してしまう可能性が高くなり、どちらかが我慢するということが生じてきます。やがて関係は長続きしなくなります。
境界を越境していることに気づいて驚かれる方がたくさんいます。そこで自分が人間関係でうまくいかない理由を知ることも少なくありません。どうしたらいいのか戸惑います。その答えは、自分と同じように相手も大事にすることです。
自分がどう思われているかに注目するよりも、相手になにをしてあげられるかを考えて実行することが重要なのです。そうは言っても自分がどう思われているのか、気になると思います。そこで「なれる最高の自分になる‘」ことをめざします。それが幸福の扉の前に立った状態です。引き返さず扉を開けましょう。「なれる最高の自分」には、誰でもなれます。しかも進化を感じたると自己効力感が強くなりモチベーションも高くなります。
ところがアンビバレンスな葛藤を抱えていると事情は変わります。自分にとって不都合な面を相手に投影して、相手の責任で行動させるように支配しようとします。たとえば異性を愛した場合、愛したくないを自分の感情にして、愛したいを相手に投影して相手の感情にするようにコントロールするのです。すると率直、誠実、対等、責任をとるという四つの要素は全部失い、支配欲だけになります。これでは境界は無断で侵犯することになります。
なぜ、そんなに複雑なことをするのでしょうか?本人も大変ストレスの多いやり方です。それを理解するには禁止令とその働きを知ることが鍵になります。
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