2011年3月20日日曜日

【トリッキーな交流】思い込み

 トリッキーでドラマティックな交流である「思い込み」は、最初に「悪者」を決めておき、自分を被害者に仕立てあげ、原因を「悪者」にして幼稚な合理化で割り切ってしまおうとするトリッキーな交流です。

「あばたもえくぼ」というように、極度の理想化したイメージを相手に描いて追求すると、失望するが一般的です。一般に善と悪は混在しているものですが、認めると不安の原因になる部分を切り捨てて無意識ながら故意に安心を得ようとするのです。

 思い込みは、いわゆる勘違いではなく、自分にとって都合の悪い部分(不安、恐怖)を排除して、ありもしない完全さをイメージすることで、内心の不安を忘れるためのトリックなのです。

 知り合いの男性は、常日頃から「あの上司のおかげで、自分の能力は発揮されない」と上司のことを不満に思っていました。ところがその上司が都合で退職し、自分がそのポストに就くと、出社拒否をするようになりました。この男性は上司を悪者にすることで、自分の不安を忘れていたのです。

 同じような「思い込み」のトリックは、いたるところに見受けられます。

仕入先への不満を年中唱えている会社のトップは、本当の不満は社内の幹部連中に持っていました。しかし自分の欲求を率直に伝えられない不甲斐なさを、仕入れ先を攻撃することで、自分に対して不甲斐なさを隠していたケースもそうです。

こどもが不登校になった母親の相談を受けたとき、兄との子育て方法が違うことを指摘したところ、頑なに否定しました。彼女はご主人との不和を覆い隠すために、こどもに過干渉になっていて、問題を引き起こしていたのです。行動を変えるように促すほど不安が増し、防御するためにヒステリックになるばかりなのです

何度も同じような「失恋」を繰り返し、仕事に身が入らない状態に陥り、仕事への意欲のなさを自分に隠していた人。
同じく「失恋」を繰り返し、結婚から逃げている人。
自分に問題がなく、女性が異常だと唱えるばかりです。隠す目的は違っても同じことの繰り返しには何らかの目的が隠されているのです。

他社の成功事例をあげて、コンサルタントの指導が悪いと不満を言う社長、実はコンサルタントが同じ改善を繰り返し提案しているにも関わらす、リスクを恐れて実行できない自身の停滞をコンサルのせいにしているのです。

 「思い込み」は個人のレベルで起こるのではなく、より大きなレベルでも起こります。
政治の世界では頻繁に起こっていて、自分たちの政策能力の不足を隠すために「悪者」を限定し攻撃するのは日常的になっています。

 「思い込み」は「責任転嫁」とよく似ていますが、「責任転嫁」が自分のミスや落ち度を他者のせいにするのと違うのは、不安や恐怖を主に自分に対して覆い隠すことを目的にしている点で、よりトリッキーです。その分、指摘されても受け入れることが困難で改善がままならない分、デメリットになります。

 人は不安になると、単純な思考に陥るものです。人は善と悪が混在しているのが一般的です。善と悪を切り離し、どちらか一方を悪者扱いにすることで、極端に理想化することで、あれさえあれば・・・」というように構造化してしまうことは、ないものねだりであって、ないものをねだることで必要な行動をとらないことは「逃げ」以外のなんでもありません。

「ないものねだり」と目標を持って行動することは全然違います。「ないものねだり」は行動しないための口実にすぎません。目標を持って行動することは、実現、達成を求めています。また目的と目標も混同されやすいのですが、目的は抽象的です。目標は目的の下位にポジショニングされるもので、目的を実現するための具体的なもので、数値化しやすいものです。

たとえば「なれる最高の自分になりたい」が目的だった場合、目標には「英会話ができるようになりたい」というように設定できます。それ以外にも複数の目標が設定でき、それぞれ数値化できます。

 幼い頃から自分を受け入れてもらい、安心できる環境に育った者は、人間は矛盾した存在であることを自然に受け入れることを学んでいます。完全でなくても受け入れてもらえることを体験で知った者と、そうでない者では不安や恐怖に直面したときの対応に違いが出ます。

 完全、確信が得られる場合には行動できるが、リスクのある場合にはパニックになるというのは、受け入れてもらった体験が不足しているので、自分が自分を受け入れていないために起こることなのです。「思い込み」は逃げるためのトリッキーな手段なのです。

ですからトリックが効果を発揮している「悪者」がいる間は、問題は水面下に隠されたままです。問題が表面化するのは、「悪者」がいなくなってからです。問題が取り除かれたときに、水面下に隠した問題が表面に表れるのです。
因果関係に矛盾が生じてつじつまが合わなくなります。新たな「悪者(原因)」を作ることで水面下に隠そうとしますが、やがてはそれも通用しなくなります。どちらにしても非合理の合理化のムリは最期には立ち往生を迎えます。待っているのは孤立です。一刻も早くトリッキーな交流をやめることが自身の弱点を強化するきっかけになります。

0 件のコメント:

コメントを投稿